駄作パラレル読みきれず短編 1-2



何かの冗談に違いないとは思ったが、どうも様子が変だ。
ヤツはおかしなことを喋る。喋りまくる。


「………。………。………………。めんどくせーから簡潔にまとめるとな、  を 4 枚ツモ切ると願いがひとつ叶うんだわ、まぁありがちな展開だけどよ、それがこの世界ってモンだ(キリッ」
 ―――はぁ…
「あーコラテメー信じてねーだろ! どんだけありがたいことだと思ってんだクソが」
 ―――ク、クソとか…
「あぁホントめんどくせー! いいか? とにかくひとつだけ願いを言ってみろ」
 ―――あぁ当分遊んで暮らせるお金があればいいのに、とか?
「くっ…、テメーみてーなつまらん人間ならそう言うと思ったぜ。だがそいつは無理な話だ。なんてったって、俺は天凰の神だからな。それに関する願いしか聞けねぇ」
 ―――んじゃ別にない…
「それじゃ俺が消えれねーんだよ! 何かあるだろ、ほら、『鵬凰卓』で打ってみてぇとか、九段 R2200 になってみてぇとかよ」
 ―――いやホントもう興味なくて…


この時点でぼくは、ヤツの話をまるっきり信用していないわけではなかった。
なぜなら、さっきから何か反応しようとする前に頭の中で会話が成立してしまっているからだ。どう考えたって非現実的だ。


どうせならばもう、むちゃくちゃ言ってしまえ。


 ―――ならさ、 R1 につき『やふてんショッピング』でほしい物 1 万円分買えるとか、、、ない…
「おしそれで決定な。まぁなんとかなる。というかもうめんどくせぇ。んでめんどくせーから、R1800未満の間はそういうのナシな。ぱっと見でわからねぇ。あと人にバレてもおしまいだからな。転売もダメだ。まぁこんなもんか…はいそれじゃサヨナラっと」


よく分からないうちに、ぼくの願いは叶うことになったらしい。
とはいっても、実感なんてものは、これっぽっちもなかったが。


あまりにも奇妙な出来事に疲れてしまったため、その日はすぐに眠り、翌日になってからいろいろと試した。
そして最近、ヤツが言っていたルール以外にも、いくつか分かったことがある。


 (1) 本当に買い物ができる。
 (2) 品物の受け渡しはモニター越しに直接ズドン。
 (3) こんな奇妙なシステムは、当然このパソコンでのみ有効。


最初は、以前からチェックしていた 3 万円ほどする財布で試してみた。
「え…。なにこれ?」
注文手続きのページに、『 R でお支払い (60,000) 』などというふざけた表記がある。
まさかとは思ったが、確定ボタンを押してみる。


ズドン。
その瞬間の衝撃は忘れられない。
モニターから箱に入った財布が飛び出してきたのだ。


「は…ははは…お釣りとか出ないんだ…」
もうなにがなんだか、よく分からなかった。


お金にはならないし、高額なものも買えない。 14.1 インチより大きい商品に至っては、モニターにものすごい衝撃が訪れるだけで、品物が中から出てくることはない。


それでも、ぼくには十分すぎた。
ほしい物など多くはないと思っていたが、タダだと思えば、なんでも魅力的に見えてしまって困る。
それからは毎日のように、夢中で“ショッピング”を続けた。―――貧乏性が抜け切らないため、まとめ買いに気をつかいながら。


いつからか額面の 60,000 に 50,000 が混じるようになり、やがて 50,000 の時のほうが多くなったが、それも深く考えることはなかった。


そんなある日、例の支払い表示が突然消えた。
ようやく異変に気付く。
いや、正確には、思い出した。


「あ、、、天凰…チャオった?」





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出し惜しみするほどのものでもないので、先の分も。
あと 1 〜 2 回ひどい妄想が続きます。