駄作パラレル読みきれず短編 1-4(END)
昔の楽しかった記憶はあんなにも鮮明に残っているのに、その時のことはよく思い出せないのが不思議だ。
きっと、忘れたかったんだと思う。
葬儀の日以来、丸山と娘の麻美ちゃんには会っていない。
どんな顔をすればいいのか、何を話せばいいのか、もうまるっきり分からなかったから。
───元々ぼくと丸山の関係なんて、そんなもんだったんだし。
今まではそう自分に言い聞かせて、逃げていた。
和田が花など供えてもらって喜ぶやつでないことは分かっていたので、残された 2 人のために何か…。
この機会を逃せば一生会いに行く自信がなかったので、そう心に決めたぼくは、すぐにあの家を訪れた。半年ぶりに。
久しぶりに会った丸山は、やはり以前よりもどこか弱っているように見えて、なんだか直視できなかった。
あの元気だった麻美ちゃんも、さすがにおとなしい。
───ぼくが顔を出したことで、思い出させちゃったかな…
そんなぼくたちの間で会話がまともに成立するはずもなかったので、さっさと本題を告げることにした。
「和田には散々世話になったけど、その、、、なにもしてやれなかった。せめて、丸山たちに何かプレゼントしたくてさ…」
正直断られるかとも思っていたが、彼女は一言
「私はいらない。麻美に聞いてみたら?」
と振ってくれた。せめてもの救いだ。
「麻美ちゃんさ、なんか欲しい物とかある?」
「パパがかえってきてほしい」
───それは…無理なんだ。
「そうだよね。でも、ぼくにできるのは…なにかプレゼントしてあげることだけなんだ。遠慮しないで言っていいよ?」
「……だったら、あのね、、、
───お願いだ。どうか、どうか、小さな物でありま…
クマーさんのだきまくらー!」
あぁ、なんてこった。
きっと、それも無理だ。
あれから何年が経っただろう。
ぼくは、毎日ずっと天凰を鬼打ちし続けている。
でも、いまだに鵬凰民にはなれていない。
あの日、それでもなんとかしたくて、必死になってモニターの中からクマーさんの頭を引っ張り出そうとしたところ、枠が折れてパソコンは壊れてしまった。
今では後悔している。
強行突破させようとして“ショッピング”の権利を失ったことに対してではなく、初めから買ってあげるという発想を失っていたことに対して。
100 体限定だというその抱き枕は、新しいパソコンを準備した頃にはもう売り切れてしまっていた。
麻美ちゃんにあのクマーさんをプレゼントできなかったことが心残りで仕方ないので、今度こそはどんな願いを言われてもかなえてあげたい。
彼女の欲しいものは自転車だったり携帯だったりかっこいい彼氏だったりと、成長とともにコロコロと変わる。
なので、いざという時に困らないよう、日頃から話を聞きに行っている。
そこですら天凰を打つこともある。丸山は当然、いい顔をしないが。
いつからか、そばで見ていた麻美ちゃんも麻雀、いや、天凰を覚えてしまった。
両親譲りのセンスとぼくのコーチによって、今ではすっかり立派な鵬凰民だ。
今ぼくが天凰を打っているのは、麻美ちゃんのためだ。
毎日50戦は打つ。
そして、ション牌の を引くたびにツモ切る。
最近では、カンチャン・ペンチャンよりも を落としたほうが、まだ成績は安定することも分かってきた。
それ以外はノーミスで打てるようになったつもりだが、今日もあざ笑われる。
『イミフ』『マジキチ』『鉄雑魚ってレベルじゃねーぞ』
でも、やはりそんなのは気にならない。
こうしていればいつか、“ヤツ”にまた会える気はしているから。
だが、ある日スッパリと天凰をやめてしまった。
なぜだかは分からないが、不思議とどうでもよくなったのだ。
───麻美ちゃんの願い、かなえられなくてごめんね。
『………。………。………………。さあ、願いをひとつ言ってみろ』
───う、うーん、ママに幸せになって欲しいかな。
『ほぅ、前回の人間よりはよっぽどまともじゃねぇか。だがダメだ、なんてったって俺は天凰の神。天凰関係だけにしてくれよな』
───あ、なら全然問題ないじゃん! 知り合いのおじちゃんがね、天凰中毒なの。お願い、なんとかしてあげて! なんだかんだでいい人だから、それさえなければママも再婚考えるらしいんだけど。「片思いなのは間違いないけど、断られない自信はある」とか言ってた。よく分かんないよねホント……
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こんなもん見せられてたまったもんじゃないですよね、ホントごめんなさい。
天鳳打って当面のネタは出てきたような気がするので、今後の目標は「もう書かない」ことです。